Agency for Cultural Affairs, Goverment of Japan
Creator’s Voice 首里城 × 比嘉了

「流れ」の思想に、琉球のアイデンティティを見出した

比嘉は制作にあたり、作品の舞台となる沖縄を視察。琉球王国の象徴だった首里城を訪問した。今回、比嘉は首里城の3Dデータなどを用いて、琉球王国をモチーフとしたデジタルインスタレーション作品を制作する。視察ツアー後、沖縄で感じた土地の空気や、予定する作品イメージを聞いた。 

ー現地視察を通じて、印象に残ったことを教えてください。

ぼくは沖縄出身ですが、高校卒業後すぐに上京したので、じつは沖縄についてあまり知らなかったのだと今回の視察で痛感しました。特に琉球王国の歴史は初めて知ることばかり。そのなかで、沖縄・琉球の思想の中心に、「流れに任せる、流れを上手く使う」といった、小さな島特有のアイデンティティを感じたので、作品のキーワードも「流れ」にする予定です。このアイデアは、首里城の視察で思いつきました。首里城は、風水的に大量の気が集まる龍脈と呼ばれる場所に位置しているそうです。こうした「流れを上手に使うこと」が、琉球の思想だと思います。

首里城から那覇市内を一望する比嘉了
首里城を訪れた比嘉

ー制作予定の作品について教えてください。

今回の作品では、複数の象徴的なシーンをシームレスにつなげ、ぼくが感じた琉球・沖縄の「流れ」を伝えたいです。また、会場は太陽光が差し込む開けた場所なので、複数の大型モニターの向こうにイメージの空間が広がり、モニターはイメージを切り取る窓として機能します。鑑賞者の頭部の位置をセンサーで検出し、モニターの背後に本当に空間が広がっているように感じさせる投影手法を用いたいと思っています。同時に、空や海との空間的なつながりを使って面白いことができないかも思案中です。

比嘉による首里城の3Dモデルを使った展示の検証映像

Profile

比嘉了
1983年沖縄県生まれ。コンピューターをツールに新しい表現を生み出す、ビジュアルアーティスト・プログラマー。リアルタイム3Dグラフィックス、コンピュータービジョン等の高度なプログラミング技術と多種多様なプロジェクトに関わった経験を生かし、インスタレーション、舞台演出、VJing、ライブパフォーマンス、VR作品など幅広い制作活動を行う。2019年にBackspace Productions Inc.を設立。近年の主な仕事に、「millennium parade」3Dライブ映像演出、「PUNPEE "Sofa Kingdomcome"」AR映像演出など。
BACKSPACE Productions Inc.
2019年設立。デジタルアート / ニューメディアアート / DIY精神 を共通の初期衝動に持ったアーティスト・プログラマーが在籍する、オーディオビジュアル・研究開発・ハードウェア設計 / 作成等の分野で活動をするプロダクションチーム。プログラミングの高度なスキルをベースにした多様かつ特殊な方面の技術・経験を基に、映像などのコンテンツを制作するだけでなく、コンテンツが収まる “フレーム” や “仕組み” から実装する事を個性としている。
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