ー現地視察を通じて、印象に残ったことを教えてください。
今回の視察では、忍者にまつわる施設や資料を数多く拝見しました。都から離れた土地柄が自警団的な組織を生み、山に囲まれた地形が罠や仕掛けを使った忍者らしい戦術のベースとなった話など、環境が「忍者」を生んだ点が興味深かったです。また、忍者というとアクロバティックな動きがイメージでしたが、普段は農民の生活を送り、必要とあらば忍者としてのスパイ活動に入るなど、実在の忍者は静かな存在だったと感じました。


ー制作予定の作品について教えてください。
忍者の生活、戦いの技法にある「隠れる、潜む」要素を、私たちが研究してきたBiological Motionという認知科学の知見と組み合わせ、「周囲に紛れて隠れているが、ふと出現する」「気づくと周囲に溶け込み、見えなくなる」という、「ヒトの気配」を感じられる作品を構想中です。 Biological Motionとは、ヒトの姿を複数個の点の動きで表現する、知覚心理学の分野で生まれた実験手法です。今回はスモークガラスで覆われた箱のなかに複数のLEDを設置し、そのなかのいくつかのLEDが動き出すことで、突然、生々しいヒトの存在が感じられる表現を目指しています。この展示を考えるにあたり、複数個の点で表現されたヒトのモデルをつくり、「直接、両目で」観察したところ、映像と異なる立体感と存在感がありました。この生々しさは実物でしか体験できないものです。
